熟成肉はドライエイジングで!特徴やウェットエイジングとの違いを解説

「ドライエイジングビーフ」や「熟成肉」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

ドライエイジングとは肉の加工方法の一種で、その名の通りお肉を乾燥させて熟成させる方法です。

今回は、
・ドライエイジングとはなんなのか
・ドライエイジングビーフが美味しいと言われる理由
・おいしい焼き方と食べ方

を徹底解説します。


ドライエイジングビーフとは

ドライエイジングビーフ(Dry Aging Beaf)とは、その名の通り「乾燥させ熟成させた牛肉」。つまり、熟成肉のことです。

熟成肉の製造方法は数種類あり、そのなかでも「ドライエイジング」と呼ばれる方法で熟成させたお肉を「ドライエイジングビーフ」と呼びます。ドライエイジングは1980年代にアメリカで考案された熟成方法で、日本で取り入れられたのはつい最近のことです。

赤身肉を食べる文化が根強いアメリカ。

「噛み応えのある硬い赤身肉をいかにおいしく食べるか」が、ドライエイジングの出発点となっています。

ドライエイジングには、日本を代表する和牛のような脂がのっているお肉より赤身肉が向いていると言われています。脂は酸化しやすく味が変わりやすいため、長期保存には向いていないからです。

肉質が硬いと言われる経産牛や乳牛を、加工せずにそのままおいしく食べられるので、近年注目されています。

  

実は、日本で「熟成肉」の明確な定義はまだありません。

定義が曖昧なゆえに、正しい方法で熟成されたお肉も、冷蔵庫で少しだけ寝かせたお肉も、どちらも熟成肉と名乗ることができてしまうのです。しかし、本物は確かに存在します。

本場アメリカで考案されたドライエイジングは、具体的にどのように作られているのでしょうか。

細かい条件はありますが、以下の3つの条件が必須になります。

  • 一定の温度を保つこと
  • 一定の湿度を保つこと
  • 風を循環させてお肉を乾燥させること

安定した環境でお肉を枝肉(内臓を取り除き、背骨から2つに切り分けた状態のお肉)のまま寝かせることで、エイジングビーフができるのです。管理せずに放っておくだけだと、ただの腐ったお肉になってしまうので、想像以上の手間と神経を使います。

  

また、家庭用の冷蔵庫やショーケースでは扉の開閉時に急激な温度変化をしてしまうため、熟成環境には向いていません。

熟成肉を作る際には広いスペースも必要になります。熟成肉を作るには豊富な知識と整った環境が欠かせません。なので残念ながら、一般家庭で作ることは困難です。

熟成されたお肉は、お肉そのものの水分量が減り、微生物の力で周りにはカビのようなものが付着します。表面は黒ずんでいて、お世辞にも美味しそうとは思えない少しグロテスクな見た目になります。

もちろん、食べる時は周りの黒ずんだところは削ぎ落としますが、衝撃的な見た目に初めて見たら「それ食べれるの?」とびっくりするかもしれません。

ドライエイジングのデメリットは、水分が抜け黒くなってしまった周りをトリミングするので、お肉の約30%がロスになってしまうことです。

普通のお肉と比べると価格も高くなります。

ドライエイジングビーフの美味しさの秘密

なぜ、熟成肉は美味しいと言われているのでしょうか?

理由はシンプルで、熟成することでたんぱく質が分解されてアミノ酸(うまみ成分)へと変わるからです。アミノ酸とはうまみ成分そのものなので、アミノ酸が増えれば必然的に美味しくなることは間違いありませんね。

熟成によってたんぱく質が分解されると、筋繊維が切れて肉質も柔らかくなります。

水分が飛ぶことにより、うまみもギュッと凝縮され濃い味わいになるのです2014年頃にお肉ブームが起き、熟成肉は日本中から注目を集めました。数多くのメディアで取り上げられてテレビや雑誌などで特集が組まれるほどです。

近年は健康ブームもあり、再び赤身肉が注目されていますね。

熟成肉は赤身肉が適しているのでよく使われています。同じ熟成肉でも、部位によって食感や味わいが変わるのも魅力のひとつです。

ウェットエイジングとの違い

現在主流な熟成方法は「ドライエイジング」と、これからご紹介する「ウェットエイジング」です。

ウェットエイジングとは、真空パックや布にお肉を巻いて、一定の温度で冷蔵保存する熟成方法です。もともとはお肉を輸送する際に劣化を防ぐため利用されていた手段でした。

そこで「お肉を寝かせると肉質が柔らかくなる」と、偶然発見されたのです。

本来は「熟成」を目的としたものではなく、「保存」することが目的だったのです。

ドライエイジングと比べると、「低コストでお肉のロスがほとんど出ない」という大きなメリットがあります。

ドライエイジングとウェットエイジング。

肉質が柔らかくなる共通点はありますが、同じ熟成肉でも味や風味の違いがよく分かるので、機会があればぜひ食べ比べてみてください。

おいしい焼き方・食べ方

熟成肉を自宅で楽しむ際におすすめの調理方法をご紹介します。

結論から言うと、塊のまま調理するのが熟成肉本来の味わいを感じられる1番おすすめの食べ方です。なかでもステーキは秀逸。肉本来のしっかりとした風味を楽しめます。

焼く時のポイントさえしっかり押さえておけば、厚みのあるお肉でも、まるでお店のような焼き加減で美味しく食べられます。

意識することは、「お肉の水分をいかに逃がさず焼くか」ということです。どのように焼いていくのかご紹介します。

美味しい焼き方

ポイント1.お肉は常温に戻しておく

お肉を冷蔵庫から出しておくだけなので難しい技術は一切ありません。ですがとても重要なポイントです。

熟成肉に限らず、お肉を常温に戻してから焼くことでお肉全体に均一に火が通り、上手に焼けます。

「表面は焼けているのに、中は冷たい…」と残念なことにならないよう、調理する30分前〜2時間前に冷蔵庫から取り出しておきましょう。

ポイント2.塩は焼く直前に振る

熟成肉は熟成段階で水分が飛ぶため、普通のお肉と比べると生肉の状態での水分量が少なくなっています。

塩を振ることによってお肉から水分が出ます。水分はうまみ成分でもあるので、極力水分が流れ出ないように塩は焼く直前に振りましょう。

早めに塩を振ってしまうと必要な水分も抜けてしまい、パサついた食感になってしまうことも。せっかくの熟成肉が台無しになってしまうので要注意です。

同時に塩は、うまみを引き出してくれる役割も持っています。「塩は焼く直前に」と覚えておきましょう。

ポイント3.塊のまま豪快にじっくりと焼く

フライパンを温めたら塊のまま、水分を逃がさないようにじっくりと全面を焼いていきましょう。塊のまま焼く理由は、火があたる面積を少なくすることでうまみを閉じ込めやすくするためです。

熟成肉を焼く際は火加減にも注意してください。

一般的なステーキは、「高温で表面を焼き上げる」と言われていますが、熟成肉は弱火~中火程度の火加減がおすすめです。高温で焼いてしまうと、お肉は急激に収縮してしまうため、中の水分が流れ出やすくなってしまうのです。

お肉の表と裏を焼いたら、側面を焼くことも忘れずに。

火が入っていくとお肉の水分が膨張し膨れ上がってきます。押したりせず、優しく扱ってくださいね。

ポイント4.お肉を休ませる

焼き終えたら、すぐに食べたい気持ちをグッとこらえてお肉を休ませましょう。

焼いてすぐカットすると、水分(うまみ)が一気に流れ出てしまいます。アルミホイルなどで包んで休ませることで、余熱で中心部分まで火が通り、うまみも全体に行き渡ります。

少し休ませるだけでより一層美味しい熟成肉を堪能することができますよ。

おいしい食べ方

好みは人それぞれですが、熟成肉はシンプルに塩コショウで食べるのがおすすめです。

塩コショウは熟成肉ならではの香りを邪魔することなく、お肉本来のポテンシャルを最大限に引き出してくれる最高の調味料です。途中で味を変えたいときは、グレイビーソース(肉汁を使って作るソース)を作っておくとまた違った楽しみ方ができますね。

グレイビーソースのレシピもたくさんありますが、赤ワインを入れるレシピがおすすめです。

深い味わいのソースは、熟成肉にもよく合います。

まとめ

本格的な熟成肉を味わいたいならドライエイジングがおすすめです。

価格は高くなるものの、普通のお肉との違いがはっきりと分かります。一見難しく思えるステーキの焼き方も、ポイントさえ押さえておけばお店レベルの熟成肉を自宅で楽しめます。

美味しい焼き方のポイントは、

・お肉は常温に戻しておく
・塩は焼く直前にふる
・塊のまま豪快にじっくりと焼く
・お肉を休ませる

でした。

見た目も豪快な熟成肉は、お酒にもよく合い食欲をそそりますね。

安心・安全な熟成肉を見極めて、食を楽しんでください!