熟成肉の食べ方、ポイントは焼き方にあります。うまみを引き出すコツ

熟成肉って聞いたことがあるから気になって買ってみたものの、実際普通のお肉とどう違うのかよく分からないという方も多いのではないでしょうか?
今回は、せっかく買った熟成肉をおいしく食べる方法について解説します!

熟成肉と普通のお肉の違い

熟成庫の中の熟成肉

近頃、よく耳にする「熟成肉」。
メディアで紹介されることもある「エイジングビーフ」とは熟成肉のことです。

普通のお肉と熟成肉は、何が違うのでしょうか?

最大の違いは、「味」と「価格」です。

熟成肉は普通のお肉に比べてうまみが強く、水分を調整しているため肉質も柔らかくなります。普通のお肉と熟成肉を食べ比べてみると違いがよく分かります。

熟成肉は、牛が本来持っている酵素の働きと整った熟成環境で、時間と労力をかけてゆっくりと作られます。
熟成することで、たんぱく質が分解されてアミノ酸(うまみ成分)へと変わるため、肉質が柔らかくなり旨みが増すというメカニズムです。

熟成肉を作るのは、想像以上に手間暇がかかります。

現在日本で主流の熟成方法は、「ドライエイジング」と「ウェットエイジング」のふたつ。
どちらの方法でも、放っておくだけだと「ただの腐ったお肉」になってしまうため整った熟成環境が必要になってきます。

ドライエイジングとは、空気を循環させながら一定の温度・湿度を常に保ち、お肉を熟成させる方法。
適切な環境でお肉を寝かせることにより、「お肉の自由水」と言われる余分な水分が抜けしっとりと柔らかな食感になります。

ドライエイジングすると、お肉の水分が飛ぶため全体の約30パーセントの質量が減ってしまいます。
うまみが凝縮されておいしくなるものの、コストが悪くなってしまうのがデメリットです。

ウェットエイジングは、真空パックしたお肉を一定の温度で保存する方法です。
もともと、お肉を輸送する際に劣化を防ぐための保存方法でした。
お肉の水分がほとんど飛ばないため、歩留まりが良いのがウェットエイジングの最大のメリットです。

このように、熟成肉を作るには安定した環境と手間がかかります。
家庭用の冷蔵庫や小さなショーケースなどでは扉の開閉により急激な温度変化が発生してしまうため、熟成環境としては不向きです。
整った環境と豊富な知識がないかぎり、残念ながら熟成肉は自作することはできません。

  自宅で熟成肉を楽しむ際は、安心・安全な製法で作られた熟成肉を購入するのをおすすめします。

【準備編】調理前に気を付けるポイント

切った熟成肉

実際に熟成肉を調理してみましょう。
調理前の段階で普通のお肉と熟成肉の違うところは、ほとんどありません。

調理前に気を付けるポイントは3つ。

  • お肉を常温に戻しておく
  • 塊肉のまま焼く
  • 塩は焼く直前に振る

熟成肉をおいしく焼く際に、特別に用意する調理器具は一切ありません。
炭火で焼いたりオーブンを利用すればおいしく焼くことができますが、今回は一般家庭にある調理器具だけでおいしく焼ける方法をご紹介します。

注目すべきポイントはお肉の水分。
「お肉の水分を、いかに外に逃さないように焼くか」が重要なポイントになってきます。

お肉を常温に戻しておく

どんなお肉を調理するときにも常温に戻すことが重要なポイントです。
冷蔵庫から出したばかりの冷たいお肉を焼くと、表面だけが焼けて中は冷たいお肉になってしまいます。
お肉の厚みにもよりますが、3センチ未満のステーキ肉であれば最低でも30分前には冷蔵庫から出しておきましょう。

塊肉のまま焼く

熟成肉は、熟成の段階で水分が抜け旨みが凝縮されているので、通常のお肉に比べ水分量が少なくなっています。
焼くときに更に水分が抜けてしまうとパサついた食感になってしまい、せっかくの熟成肉が台無しになってしまいます。
調理時の「水分が抜ける」は「旨み成分が抜ける」ということなので、塊のまま熟成肉を入手できた場合は焼く前にカットすることは避けましょう。

塩は焼く直前に振る

  • ステーキ肉に振る塩には、3つの役割があります。
  • 臭みを取る
  • 浸透圧で余分な水分を出す
  • 旨みを引き出す

早い段階で塩を振ってしまうと、必要な水分まで抜けてしまいパサついた食感のお肉になってしまうので、通常のお肉に比べて水分量が少ない熟成肉は焼く直前に塩を振るのがベストです。
塩を振って水分が出てしまった場合は、清潔な布やキッチンペーパーなどで拭き取ってください。

【実践編】うまみを引き出す焼き方

焼いてる熟成肉

下準備ができたらお肉を焼いていきましょう。
熟成肉を焼くときのポイントは3つ。

  • フライパンを十分に熱しておく
  • じっくり火を通す
  • お肉を休ませる

普通のお肉を焼くときと大きく違うポイントは、じっくり火を通すこと。
これは、熟成肉ならではの焼き方です。
大事なポイントさえ抑えていれば、プロ顔負けのお肉を自宅で焼くことができますよ。

フライパンを十分に熱しておく

中火〜強火で、フライパンを十分に熱しておきましょう。
鉄製のフライパンは、均一に熱が通りやすく焼きムラが少なくなるというメリットがある一方、家庭用としてよく使われているフッ素加工のフライパンは少ない油でもくっつかずに焼けるというメリットがあります。
お家にあるフライパンの特性に合わせて、上手く活用してくださいね。

じっくり火を通す

熟成肉は、じっくりと時間をかけて火を通して焼いていきます。
通常のお肉を焼くときと大きく違う、熟成肉ならではのポイントです。
高温になるほどお肉は急激に収縮するため、お肉の中の水分が抜けやすくなります。
水分を逃がさないようにじっくりと焼くことを意識しましょう。

火加減は弱火〜中火。
まずはお肉の表面(2面)を焼き、次にお肉の側面(4面)も忘れずに焼きます。
お肉の旨みを中に閉じ込めるイメージで、合計6面をじっくり焼きます。
お肉を焼いていくと中の水分が膨張し、パンパンに膨れ上がってきます。
間違っても必要以上に押したりせずに、優しく扱いましょう。

お肉を休ませる

全面をじっくり焼いたらお肉を火からおろします。
アルミホイルで包んで休ませ、余熱の力でじわじわと中まで火を通します。
焼いたばかりのお肉をすぐ切ってしまうと中の肉汁が破裂するように溢れ出し、旨みも一緒に逃げてしまうからです。
2分ほど休ませたら、強火のフライパンで表面に焦げ目をつけて完成です。

ステーキの焼き加減は10段階あり、よく知られているのは「レア=60℃」「ミディアム=65~70℃」「ウェルダン=77℃」。焼き加減は、お肉の中心温度のことを言います。

レアは、お肉の表面がしっかり焼けていて中心部分はまだ赤く温度は低い状態です。 「たたき」をイメージすると分かりやすいですね。お肉の弾力があり、肉汁が多く出ます。

ミディアムは、お肉の表面がしっかり焼けていて中心部分は薄いピンク色のバランスの良い焼け具合で、肉汁も少し出ます。 ステーキで人気の高い焼き加減です。

ウェルダンは、表面もしっかり焼けていて中心部分もしっかり火が入っており、肉汁も少なく弾力も少なめ。よく焼きと言われる状態のお肉です。

お肉を休ませる時間によって焼き加減を調整することができるので、お好みの焼き加減を見つけてみてくださいね。

まとめ

普通のお肉と比べると手間とコストがかかる分価格は高くなりますが、凝縮した旨みと柔らかさが特徴の熟成肉。
最近では認知度が高まり、熟成肉の需要も高まってきました。

  • 常温に戻して塊肉のまま焼く。
  • 塩は焼く直前に。
  • 十分に熱したフライパンで、じっくりお肉を焼き、しっかり休ませる

これさえ守れば、お店で食べるような熟成肉のステーキを自宅で楽しむことができます。
ぜひ、旨味のつまった熟成肉をお家で食べてみてはいかがでしょうか。