熟成肉は家で作れる?熟成と腐敗の違いや仕組みをプロが解説
食べたことがなくても、一度は聞いたことがある「熟成肉」。
作り方や美味しくなる仕組みを知っている人は少ないのではないでしょうか?
- 熟成するとお肉がどうなるのか
- 家で熟成肉は作れるのか
- 熟成と腐るの違いは何なのか
今回は、熟成肉に関する疑問を解決していきます。
熟成肉とは

食肉は死後硬直した後に、酵素の作用によってタンパク質が分解されて、ペプチドやアミノ酸といううまみ成分に変化します。
熟成と腐敗の違い
熟成と腐敗は、菌類や酵素の作用によって肉のタンパク質を分解していくメカニズムこそ非常に似ていますが、食肉の中で生成される菌類の種類が違います。
生成される菌類の違いは、「温度」「湿度」「空気の流れ」の3つの条件により生まれます。
熟成はタンパク質をうまみ成分に変化させる菌が活性化している状態を指し、一方腐敗は、有毒なカビや食中毒の原因となる菌が繁殖した状態をいいます。
腐敗の場合は、触るとぬるぬるとしたり、においが臭かったりします。
熟成肉の作り方
ドライエイジング
「ドライエイジング」は乾燥熟成とも呼ばれ、文字通り風を送って乾燥させながら食肉を熟成させる方法です。
食肉の全体の皮と内臓を取り除き、骨がついたままの枝肉を大型の熟成倉庫につるして、ファンを回し乾燥させます。
倉庫内の温度は0〜2度のチルド状態、湿度は70〜80%という徹底的に管理された環境下で保存されます。
ドライエイジングの技法は、アンガス牛のような歯ごたえのある赤身肉を柔らかくするために確立されました。
そのため、日本の霜降り牛のような脂身の多い食肉はドライエイジングに適していないといわれています。
とはいえ、和牛の中でも赤身の多い部分には効果的で、熟成することでうま味がアップします。
ドライエイジングで熟成される食肉は、このような手間をかけて保存されているのです。
ウェットエイジング
ウェットエイジングは、食肉を真空状態でパックで包み水分を取り除きながら寝かせる方法です。
食肉に布や吸水紙を巻き、水分が浸み込んだら取り替える作業を繰り返し、2週間〜2か月程度かけて熟成させます。
元々ウェットエイジングは、食肉が輸送の際に劣化することをふせぐ保存方法でした。
輸送された食肉が運ばれることでおいしく変化していることが分かり、エイジング技法のひとつとして確立されたのです。
元は保存が目的なので、熟成された肉のうま味はドライエイジングや枯らし熟成ほどアップしません。
ドライエイジングや枯らし熟成の方法と比べて準備や管理が容易だというメリットがあります。
熟成の経験や知識がないと劣化との区別がつかないこともあるので注意も必要です。
木枯らし熟成
枯らし熟成とは、枝肉のまま風を当てずに熟成する方法。
1〜4℃に設定された冷蔵庫の中で、食肉を枝肉のまま吊るし、3〜4週間放置しておくことで熟成します。
枯らし熟成は、菌が自然に繁殖して食肉に付着することで自由水がゆっくりと引き出され、成り立っています。
枯らし熟成は日本の伝統的な熟成方法といわれています。
ドライエイジングと技法は似ていますが、菌が付着するかという点に違いがあります。
日本では、熟成という言葉もない時代から、鳥やシカをこうした方法で吊るしておく習わしがあったのです。
このような伝統的な技法ですが、現在では利益率が悪いことや和牛は熟成させなくても肉質が柔らかいことからあまり用いられなくなりました。
乳酸菌熟成
乳酸菌発酵熟成とは、チーズやヨーグルトなどの乳酸菌を食肉に付着させて熟成させる方法。
乳酸菌発酵熟成はドライエイジングやウェットエイジングと違い、骨を肉から取り外して熟成させます。
チルド状態で倉庫で寝かせるという点はほかの手法と同様です。
乳酸菌発酵熟成の特徴は、乳酸菌が肉全体に蔓延するため腐敗が起きにくいことです。
乳酸菌のにおいが食肉に付いてしまうため、実用化している店舗はまだ少ないのが現実。 今後の改良に期待ですね。
熟成肉は家で作れる?
ドライエイジング
家庭でドライエイジングすることは、非常に難しいといえます。
先ほど述べた通り、まず大きな肉を保管する空間を用意しなくてはなりません。
その上ドライエイジングでは、温度や湿度、・空気の流れを管理しなければならないため、家庭で初心者が始めるのは現実的ではありません。
失敗すれば、有害なカビや菌類が発生してしまい、ただの腐った食肉になってしまう可能性も。
健康においしいものを食べるためにも、むやみに行わないことをおすすめします。
ウェットエイジング
ウェットエイジングでの熟成はどうでしょうか?
結論から言うと、ウェットエイジングも一般の方が家庭で挑むことはやめておいた方がいいといえます。
ウェットエイジングは、ドライエイジングに比べ管理方法は容易でしたね。
しかしながら、自宅の冷蔵庫は開け閉めする際に温度が上下したり、十分な真空処理ができなかったりと環境が整えられていません。
家庭でウェットエイジングを行うと品質劣化が伴い、危険が伴う可能性が高いので、専門的な知識がない場合は手作りは避けましょう。
熟成肉のおすすめの食べ方
塊焼き
熟成肉の一番のおすすめの食べ方は何といっても「塊焼き」です。
肉を塊のまま焼き、表面にしっかりと焦げ目をつけることによって、熟成肉のうま味は封印され、中心部は生に近いミディアムレアの状態に保たれます。
熟成肉はうま味が増加している一方で、水分が少なくなっているというのも特徴。
一般の食肉と同じようにカットしてから焼いてしまうと、肉汁が消えてしまいパサパサとした食感になってしまうので、塊のまま焼き、水分を閉じ込める塊焼きでジューシーにおいしく、熟成肉の香りを楽しみながら食べましょう。
熟成肉のハンバーグ

ところが、熟成肉のハンバーグは後味がスッキリとしているのに肉のうまみがしっかりと感じられ、バランスが絶妙です。
熟成肉特有の香ばしい香りも感じられ、おすすめの逸品といえます。
熟成肉のサイコロステーキ

まとめ
今回は熟成肉の種類別の作り方や、おいしい食べ方についてご紹介しました。
結論から言うと、専門的な知識がない一般の方が家庭で熟成肉を作るのは現実的に考えると難しいです。
ネット通販やお取り寄せグルメなら、自分で作るよりも安全でおいしい熟成肉を簡単に楽しむことができますよ。
みなさんもぜひおいしい熟成肉を堪能してみてくださいね。