牛の胃が4つある理由。それぞれの名前や特徴を解説
焼肉店のメニューにホルモンの1つとして牛の胃がありますが、牛には4つの胃があるということをご存知ですか?
4つの胃それぞれに名前が付いていて、特徴も個々ですべて異なります。
今回こちらの記事では、牛の胃について「名前や機能・どの様な味がするのか」などを解説していきます!
牛の胃が4つある理由
牧草牛は究極の食材!|4つの胃の不思議。 | Dr.藤巻の美容歯科ブログ より
牛には胃袋が4つあり、牛の全体重の15%を占めています。
どうして牛の胃には4つの胃袋があるのでしょうか。答えはエサにあります。野生の牛や放牧畜産の牛は草が主な食べ物です。草の消化を促す仕組みが4つの胃袋にあります。
胃は4つありますが、胃液で消化をする仕組みは第4の胃だけで行われています。
第1から第3の胃袋では、口から1度飲み込んだ草を、再度口の中へ戻して「噛む飲み込む、噛む飲み込む」という動作を繰り返し行っているのです。この行動を「反芻(はんすう」と言います。
第3の胃に到着するまでに微生物が草を分解し、それが牛の栄養源になっています。草を完全に消化するために、牛の胃袋はこの様な仕組みになっているのです。
それぞれの名前と機能と特徴
続いて、それぞれの名前や機能・特徴をお伝えしていきます。
第1の胃:ルーメン(部位名:ミノ)
第1の胃は4つの胃のなかで1番大きく、「ルーメン」と言われています。
牛の胃全体の80%を占めていて、成牛の場合だと200リットルの大きさです。第1の胃にはたくさんの微生物が住んでいます。微生物がいるお陰で、植物の繊維を栄養源として牛が吸収できるように、発酵・分解をしてくれる機能があります。
牛肉の部位だとミノやガツと言われています。
しっかりとした歯ごたえで厚みがあり色が白いのがミノの特徴です。コリコリとしていて固く臭みの強い部位なので、しっかりと下処理を行って包丁で切り込みを入れてから調理を行います。他のミノと比べて厚みのある部位は、上ミノとして提供されています。
コリコリしていながら噛めば噛むほどミノの脂が溶けだします。
コリコリした食感と柔らかい食感のミノがあり、それにも理由があります。第1の胃のミノは食物の分解をするため、激しく運動をしています。その運動がコリコリとした食感を作り出す要素となっているのです。
穀物を食料としている牛の場合、脂肪が適度についた柔らかい肉質に仕上がります。胃の運動量も少なく、ミノも柔らかくなるのです。
ミノの食べ方は、焼肉や刺身にして食べられています。あっさりした味ですし、なにより食感が最高です。
第2の胃:蜂巣胃(部位名:ハチノス)
第2の胃は蜂の巣のようなひだが特徴で、蜂巣胃(ほうそうい)と言われています。
下処置にはかなりの手間と時間がかかりますが、4つの胃の中で1番美味しいです。こちらは胃全体の5%ほどしかありません。蜂巣胃は繰り返して収縮を行うので、第1の胃で消化しにくかった食物を食道や口に押し戻す機能を持っています。
口まで押し戻された食物は時間をかけて噛み直されて、再度第2の胃まで下がってくるのです。
牛肉の部位だと「ハチノス」と言われています。ミノと同じように臭みが強く固いので、水洗いをした後にも更に茹でる調理が必要になってきます。弾力のある食感で味にもクセがないですし、時間をかけて煮込むと柔らかくなるのが特徴です。
日本だけでなく、イタリア料理のトリッパにもハチノスが使用されています。
第3の胃:葉状胃(部位名:センマイ)
第3の胃は、葉っぱが何枚も重なっているようなひだがある作りになっているため、葉状胃(ようじょうい)と言われています。こちらは胃全体の7%ほどを占めています。
このひだが食物を選別してすりつぶし、大きなかたまり状態のものは第2の胃へ戻し、消化しやすくなったものは第4の胃へ送る機能があります。栄養分や水分を吸収する働きがあるのも特徴的な部分です。
独特な歯ざわりで、鉄分や亜鉛を多く含み、脂肪分が非常に少ないです。
牛肉の部位だと「センマイ」と言われています。コリコリとした食感とクセのない味で、脂の乗っている部分は焼肉でも人気があります。
第4の胃:アボマズム(部位名:ギアラ)
第4の胃は「アボマズム」や「しわ胃」と言われています。
成牛のアボマズムは胃全体の体積の7〜10%ほどですが、産まれたての子牛だと胃全体の70%も占めているのです。アボマズムは人間の胃と同じ様な働きがあり、食物を消化したり吸収する機能を持っています。
消化液の分泌は一切ありませんが、第4の胃のアボマズムに辿り着くまでにほとんどの食物が細かく分解されているため、他の動物と比較すると消化作用が強くないことが特徴です。
牛肉の部位としては「ギアラ」と言います。ミノ・ハチノス・センマイの3つの胃と比較すると柔らかくて滑らかなのが特徴で、脂肪分が全体的に多いです。
その他にもギアラには赤みがあるので「赤センマイ」と言われることもあります。歯ごたえも良く、濃厚な味わいが特徴です。焼肉屋でも人気がありますし、煮込み料理に最適な部位です。
おすすめの食べ方
牛の4つの胃について、その理由や名前・機能・特徴等をお伝えしました。
最後に、おすすめの食べ方を解説していきます。調理のワンポイントアドバイスも一緒にお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
ミノのおすすめの食べ方
コリコリした歯ごたえが特徴的なのがミノです。
たんぱくな味わいがあり、高品質なミノだと臭みも気にすることなく、甘い旨味があります。臭みを気にせずに食べることができる味噌ダレの味付けが濃厚な味わいもありおすすめです。臭みの気にならないミノであれば、塩ダレの味付けも美味しいですよ。
調理のワンポイントアドバイスとしては、下処理の時にじゅう毛が密生している皮を剥ぎ、そのままだと硬くて食べにくいので、包丁で切れ目を必ず入れてください。
ハチノスおすすめの食べ方
あっさりとした味なので、年配の方でも美味しく食べられます。
噛めば噛むほど出てくる独特な味わいが好きな人もいます。塩ダレやもみダレで味付けして食べるのがハチノスのおすすめの食べ方です。焼肉だけでなく、煮込み料理や和え物にもハチノスは使われています。
調理のワンポイントアドバイスは、臭みがあるため「茹でる、水気を取る」を何度か繰り返し行い、黒い皮が付着している場合にはこの部分をしっかり取りましょう。
コラーゲンがたっぷり含まれているので、女性におすすめの部位です。
センマイのおすすめの食べ方
センマイは低脂質・低カロリーで、コリコリとした歯ごたえがあります。
栄養価も高く、他の部位と比べると価格もリーズナブルです。脂肪分が少ないのでさっぱりとした味をしています。シンプルにワサビダレで食べるのがおすすめの食べ方。センマイ刺しとして食べることもできるため、ごま油や酢味噌などでも美味しく食べられます。
調理のワンポイントアドバイスは、しっかりと加熱すること。たくさんのヒダの隙間に汚れが溜まりやすいので、しっかりと下処理をしましょう。茹でるだけでも色々な味付けを楽しめますよ。
ギアラのおすすめの食べ方
ギアラはミノ・ハチノス・センマイと比較すると噛み切りやすいです。
コリコリでさっぱりしていて、噛めば噛むほど味が出てきます。どんな味付けでも美味しく食べられるので、自分好みで食べてみてください。おすすめの味付けは塩ダレです。
調理のワンポイントアドバイスとしては、独特な臭いがするので、しっかりと下処理をしましょう。たっぷりのお湯で臭みがなくなるまで、茹でこぼしを行ってください。ぬめりが残っていると臭みの原因となってしまいます。茹でこぼしのあとはぬめりを取り除きましょう。
まとめ
牛の胃が4つあるのは、反芻を何度も繰り返して行い、草を消化するためでした。
また、胃の機能や特徴、おすすめの食べ方をご紹介しました。それぞれ特徴のある4つの胃を、ぜひ一度味わってみてください。