牧草で育てた牛・グラスフェッドビーフの味や特徴を解説

「グラスフェッド」という言葉を聞いたことありますか?

栄養価が高く、ヘルシーで美味しいお肉「グラスフェッドビーフ」。今回はグラスフェッドの定義、グラスフェッドビーフの味や栄養の特徴を解説していきます!

グラスフェッドとは

そもそも「グラスフェッド」とはどういう意味なのでしょうか?

グラスフェッドは英語の「grass fed」からきています。日本語にすると「草で餌付けられた」、「牧草を食べて育った」という意味です。

「グラスフェッドビーフ」は、基本的に草だけを食べて育った牛のお肉のことを指します。新鮮な牧草が餌となるため、広大な土地に放牧され、のびのびと育てられることが特徴です。


でも、ちょっと待ってください。

「そもそも牛って草食動物なのでは?」「牛はみんなグラスフェッドじゃないの?」と疑問に思うかもしれません。

実は普段スーパーでよく目にする牛肉は、人工的に配合した高カロリーな穀物を食べて育った牛のお肉なんです。トウモロコシなどの高カロリーな穀物を食べさせることで、牛に効率よくお肉をつけられます。

穀物は英語でグレイン(grain)なので、このような飼い方は「グレインフェッド」と呼ばれます。グレインフェッドでは、牛を効率よく太らせるため放牧はされず、牛舎のなかで運動を制限された環境で牛が育てられています。

グラスフェッドビーフの特徴

グラスフェッドは牛の飼育方法の一種であることがわかりました。では、お肉として普通の牛肉とどう違うのでしょうか?

グラスフェッドの牛は、高カロリーな穀物をほとんど食べません。また、広大な土地に放牧され、適度に運動しながら育つため、脂肪が少なく赤身の多い肉質となります。

栄養面の特徴

グラスフェッドビーフの栄養面での特徴として、タンパク質の含有量が多いことが挙げられます。含有量はグラスフェッドビーフ100gあたり約30.7gに対し、大豆は100gあたり約14.8g。

同じく良質なタンパク質と言われる大豆と比較しても多いことがわかります。

 

またグラスフェッドビーフは鉄分も豊富です。

グラスフェッドビーフ100gに含まれている鉄分は調理済みのもので約2.6mgであり、ほうれん草の約3倍と言われています。グラスフェッドビーフの鉄分は、ほうれん草などに含まれる「非ヘム鉄」より吸収率が高い「ヘム鉄」です。

同じヘム鉄を含む食品の中でも鶏胸肉の約5倍、豚肉の約2.6倍、白身魚の13倍の鉄分が含まれています。

さらに、人間の体内では作れない不飽和脂肪酸の「オメガ3脂肪酸」や牧草由来の「β-カロテン」、脂肪燃焼を助けるといわれる「共役リノール酸」などが多く含まれていることも特徴として挙げられます。

味や香りの特徴

肝心の味はというと、タンパク質が多く旨味成分が多いため、味が濃くて雑味が少ないです。赤身肉なのできめ細やかでやわらかく、舌触りもよい食感になります。

また、お肉の産地にもよりますが、香りが強いのも特徴です。

ミネラルの多い土地でグラスフェッドで育てられた牛は、草と一緒にその土に含まれるミネラルも摂取するため、お肉にも香りがつくことがあるのです。

この香りは人によって臭みを感じることがあります。お酒や牛乳、フルーツに漬け込むか、下茹ですることで、お肉の匂いを取ることができます。

グラスフェッドビーフは何ランクなの?

「栄養価も高くて味も美味しいならお肉のランクはもちろん高いんですよね?」

そう思う方もいらっしゃるかもしれません。

一般的な牛肉のランク付けは、と畜(解体)されて食肉になる過程の枝肉に対して行われます。具体的には、部分肉がどれくらいとれるかを基準とした「肉量評価(歩留(ぶどまり)等級)」と枝肉の「品質評価(肉質等級)」を行い、両者の等級を合わせて評価されます。

歩留等級は、ロース芯の面積、ばらの厚さ、皮下脂肪の厚さ、半丸枝肉重量を測定し、独自の計算式によりA・B・Cの3段階で評価されます。Aは標準よりよいもの、Cは標準より劣るもの、Bはその中間の評価です。

一方で肉質等級は、「脂肪の入り具合・肉の色・肉の締まり及びきめ・脂肪の色と質」の4項目について、5段階で各項目の等級が判断されます。そして判断された4項目の等級のなかで最も低い等級が、この肉の肉質等級となります。

 

このように牛肉のランクは、歩留等級がAからCの3段階、肉質等級が1から5の5段階の計15の等級に区分され、これらを連記してA-5、B-3というように表記されます。

しかしこれらのランク付けは、牛肉そのものに対してであり、美味しさのランク付けではないことに注意が必要です。人それぞれの好みによる部分も大きいため、A-5ランクのお肉を美味しいと感じる方もいれば、A-4ランクのお肉のほうが美味しいと感じる方もいます。

牛肉のランクが高いから必ずしも美味しいというわけではありません。

グラスフェッドビーフも同様です。牛肉は個体ごとにランクが異なり、そもそも、お肉のおいしさと牛肉のランクは相関していないことを知っておいてください。

まとめ

グラスフェッドビーフは、広い土地に放牧して牧草のみを餌としてのびのびと育てた牛のお肉のことでした。

一般的な牛肉は効率的に太らせるため、牛舎の中で運動制限をさせながら高カロリーな配合飼料を与えて育てているため、牧草で育てる「グラスフェッド」とは飼養方法が大きく異なります。

グラスフェッドビーフの特徴は、高タンパク・低脂肪、鉄分豊富、オメガ3脂肪酸やβ-カロテン、共役リノール酸などを含んだ栄養価の高い赤身肉であること。

牛肉のランクも高いのではと思いきや、牛肉のランクはあくまでお肉そのものの評価であり、美味しさとの相関もありませんでした。

しかし、グラスフェッドビーフは世界各国のお肉の品質や味を競うステーキの国際コンテストでも高評価を獲得しています。ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか?