発祥は古代ローマ!ローストビーフはイギリスの伝統的な家庭料理

旨味が凝縮していて、ちょっと贅沢な気分にもなれる。そんなローストビーフですが、「どこの料理か?」と聞かれると、答えられない方も多いのではないでしょうか。

実はタイトルにもある通り、ローストビーフは古代ローマから食べられている、イギリスの伝統的な家庭料理なんです。今回はローストビーフがどのように古代ローマで生まれたのか、日本ではいつから食べ始められたのかなどを徹底解説します。

そもそもローストビーフってどんな料理?

ローストビーフとは、牛肉を焼いてソースを添えた正統派イギリス料理です。

ローストとは、オーブンで肉や野菜を焼くといった意味で使われます。オーブンがない時代は焼き串に刺して直火で焼く方法で調理されていた経緯があります。

イギリスでは、材料を下準備して後はオーブンで焼くだけといった簡単なものが多いです。家庭で料理を作る際も手間がそれほどかからないといった合理的な理由でこのような調理法が好まれています。

現代では広く調理法として浸透しており、ローストビーフといえば大きな塊の牛肉をオーブンでじっくり焼くことを指します。肉の部位は特に選ばず、調理でよく使われるのはサーロインやランプ(希少部位の赤身)です。

調理時は大きな肉のかたまりを使います。

火の通り加減により美味しさが左右されるため、あまり小さい肉だと調整が難しいからです。焼き上がった肉を好みの厚さにスライスし、肉を焼いた時の肉汁をベースに作ったグレイビーソースをかけて、家庭やレストランで提供されます。

ローストビーフの発祥

ローストビーフは、古代ローマ軍がイギリスで牛肉のかたまりを焚き火で焼いて食べたのが発祥という説があります。古代ローマの食事のメインディッシュは肉料理でしたが、牛肉は一般的にはあまり好まれていませんでした。

豚肉、イノシシ、ガチョウなどが主に食べられていたのです。

牛肉料理は単純に焼くだけといった調理方法が主流で調理に時間がかかる上、硬くて食べにくいことから、当時はそれほど食べられてはいなかったのです。さらに牛は、食料というよりは主に農耕や運搬用の労働力です。

牛肉料理を食べやすくするために調理方法を進化させたのはイギリスの知恵といえます。

本場イギリスでの食べ方

続いて、本場イギリスでの調理方法や食べ方を紹介します。

ローストビーフなどの大きな肉料理は、家族全員が集まる日曜日のご馳走です。時間をかけてランチを楽しみ、一週間の疲れを癒す意味があります。大勢の人が集まる結婚式や、家族が集まるクリスマスに作る特別な料理です。

昔はイギリス貴族の間で牛一頭分のローストビーフを作る「サンデーロースト」という習慣がありました。

このとき焼いたローストビーフを数日かけて食べていたのです。大家族で使用人も大勢いたので、このような習慣があったのでしょう。現在はレストランやパブでローストビーフが日曜日限定メニューとして提供されているところもあります。

伝統的な調理方法の中には、テューダー朝(1485〜1603年)時代のレシピをもとにしたものがあります。

伝統的なローストビーフの作り方

手順1. スパイス(シナモン、ナツメッグ、クローブ、胡椒)をまぶします。小麦粉もしくはパン粉、オートミールのいずれかを全体につけます。肉の表面全体に油脂(バター、脂身、サラダ油)を塗ります。肉汁が出てしまうので塩はふりません。

手順2. 200℃のオーブンで15分焼き、150℃に落として肉500gに対して、さらに15分から20分焼きます。

手順3. 焼き上がったらオーブンから出し、好みの厚さにスライスして、グレイビーソースをかけます。

グレービーソースの作り方

グレービーソースは、ローストビーフを焼いた時にでた肉汁を利用して作ります。

肉を取り出したあと肉を焼くときに使ったバットを火にかけ小麦粉をふり、底をこそげとります。スープストック(湯で固形スープを溶かしたもの)を少しづつ加え、ダマにならないようにのばして、塩胡椒で味付けします。サラリと流れるくらいの濃度のソースに仕上げるのです。

付け合わせの野菜はブロッコリー、カリフラワー、にんじん、マッシュポテトなどです。パンの代わりにヨークシャープディングを添えます。薬味はホースラディッシュ(西洋わさび)、マスタード、クレソンです。

ヨークシャープディングの作り方

材料は小麦粉、卵、牛乳、水、塩。どの家庭にも常備されているものです。

全体をダマにならないようによく混ぜて、型に流し込み、高温のオーブン(220℃)で20分から30分焼きます。卵とオーブンの火力で中が空洞に(シュークリームの皮のように)なってふくらみます。焼きあがるまでオーブンの扉は開けてはいけません。

ヨークシャープディングは、ローストビーフの肉汁やソースを吸わせて食べる役割があります。最高の作り方は、オーブンの上段で肉をローストしながら滴り落ちる肉汁をヨークシャープティングに吸わせながら焼く方法です。

日本のローストビーフ

日本で最初にローストビーフが登場したのは幕末です。

当時日本にいたアメリカ、イギリス、フランスなどの各国の大使をもてなす料理として提供された記録があります。明治になるとローストビーフの調理法が紹介された料理本も登場します。

昭和になると、有名ホテルのシェフや料理研究家たちによるレシピ本で代表的な西洋料理として認知が広まりました。お正月などのおもてなし料理のイメージが家庭料理としてはあります。

牛肉は比較的高価でご馳走感があるので、高級ホテルのレストランで提供される料理、パーティー料理として日本では広まったのでしょう。

 

イギリスでの伝統的作り方を取り入れつつ、日本でさまざまな調理法が工夫されて広まっています。なかでも、事前にフライパンで焦げ目を付け、調味液に漬けておく作り方は一般的です。

先に表面を焼き固め、中は低温でじっくり火を通す調理法が日本のローストビーフだといえます。

2016年、日本では「ローストビーフ丼」のブームが巻き起こりました。ご飯の上に薄切りのローストビーフを盛り上げ、トッピングに卵黄やヨーグルトソースをかけて提供されます。まさに「インスタ映え」の現代風な料理です。

ちなみに最近では、ローストビーフの調理法として低温調理法が注目されています。国産牛のかたまり肉(もも肉)、脂身の少ない赤身肉を使います。

まとめ

今回は、ローストビーフの発祥やイギリスでの食べ方、日本での特徴について紹介しました。

ローストビーフは歴史的な料理としてイギリスの家庭料理から発展し、いまでは日本の家庭やレストラン、ホテルで提供されるほど有名な料理になっています。

素材を厳選して自宅で作るローストビーフを一度試してみてはいかがでしょうか。