関西のすき焼きは肉を先に焼くのが主流|関東との違いや作り方を解説
みなさんはすき焼きを食べる時に「すき焼きというのになぜ焼かずに煮るんだろう?」と思ったことはありませんか?
実は関西ではすき焼きはその名の通り、焼いて食べるのが一般的なんです。
関東と関西ですき焼きの調理法が異なることを知らないという方も少なくないかもしれません。
今回は関東・関西での食べ方の違いや、それぞれのすき焼きの作り方について解説します。
関東と関西 それぞれのすき焼きの特徴
関東と関西におけるすき焼きの違いを知るため、まずはすき焼きのルーツを探ってみましょう。
すき焼きは、食肉や他の食材を浅い鉄鍋で焼いたり煮たりして調理する日本料理のことだと定義されています。
すき焼きの調味料は醤油・砂糖・料理酒などを利用することが一般的です。
基本的なすき焼きには薄切りにした牛肉が用いられ、ネギ・白菜・春菊・椎茸・焼き豆腐・こんにゃく・しらたき・お麩などの具材が添えられます。
すき焼きの歴史
幕末になるまで、日本では牛肉が食べられていませんでしたが、すき焼きと称される料理はその前から存在していました。
古くは江戸時代前期にあたる1643年に刊行された料理書の中で「杉やき」という料理が登場しています。
これは鯛などの魚介類と野菜を杉材の箱に入れて、砂糖は使用せず味噌で煮たものでした。
1829年に刊行されている本にもすきやきについて具体的な記述があり、使い古した鋤を火にかざして鴨などの鶏肉や鯨肉、魚類などを加熱する一種の焼き料理として「鋤やき」が紹介されています。
他にも、すき身の肉を使うことから「すき焼き」といわれるようになったという説もあります。
魚介類の味噌煮である「杉やき」と、鳥類・魚類の焼き肉である「鋤やき」という2つの料理が、今の「すき焼き」のルーツだと考えられています。
明治時代に入ると牛肉は健康に良いという考え方が徐々に広まっていきます。
その結果、関東では平鍋で牛肉とネギを煮た牛鍋という料理が大流行しました。
その頃関西では「鋤やき」から派生した平鍋の上で肉やその他の具材を焼き、汁椀に入れた生卵につけて食べるという、焼く工程がメインであるすき焼きが流行していました。
そして大正12年、東京の街を関東大震災が襲います。
東京を中心に流行していた牛鍋屋の多くが被害を受け、閉店を余儀なくされました。
牛鍋屋が被害を受けたタイミングで関西からすき焼きが伝わり、地元で馴染み深い牛鍋のレシピと融合して関東風のすき焼きが新たに誕生します。
この時、呼び名がすき焼きとして徐々に統一されていったため、調理法がことなる2つのすき焼きができたのです。
他の地域のすき焼き
関東と関西の違いが気になるところではありますが、すき焼きには他にも地方性があります。
北海道・東北地方・北関東・新潟県では、牛肉ではなく豚肉を使用する地域もあるそうです。
滋賀県や愛知県などでは鶏肉を使うこともあります。大阪府では魚介類を使用した「魚すき」および「沖すき」が郷土料理として親しまれており、高知県では鯨肉を用いる鯨のすき焼きも一般的です。
沖縄県では気候や歴史的な経緯により、鍋料理の文化が存在しません。
そのため、すき焼きはフライパンで調理する皿盛りの料理として認識されています。
地域によっては食べる際にマーガリンを加えたり、タバスコなどのホットソースをかけて食べる習慣もあるようです。まるで別の料理のようにも感じますね。
すき焼きといえば溶き卵をつけて食べるのが一般的。
溶き卵についてもルーツとしては具材の熱さを覚ますことや、濃い味付けを緩和するなど諸説あります。 関東風でも関西風でも溶き卵をつけて食べるという点は共通しています。
関東の“煮る”すき焼きの作り方
関東と関西のすき焼きの違いが大体分かったところで、いよいよすき焼きのレシピについて紹介していきます。
まずは関東の関東の“煮る”すき焼きの作り方からです。
関西風のすき焼きでは牛肉を焼いてから味付けしますが、最初から割下を煮立てるのが関東風です。
まずは具材の準備から始めます。
白菜や焼き豆腐は食べやすいサイズに切っておき、春菊やえのきなどは根元を切り落とします。
ネギは幅1〜2cm程度の斜め切りにして、結びしらたきは他の具材と一緒に煮込む前にさっと茹でておきましょう。
次に割り下を準備します。
料理酒・みりん・醤油がそれぞれ100ccの割合に、砂糖が30gがレシピの基本です。
準備した鍋にみりんと料理酒を入れて、煮立つまで沸騰させます。
煮立ったら火を止め、砂糖と醤油を入れてよく馴染ませます。
割り下にはお好みでだし汁を加えても美味しいですよ。
具材と割り下の準備ができたら、材料を煮込んでいきましょう。 準備した鍋を温めて牛脂を溶かしたら、牛肉を広げながら入れてネギも入れます。
準備した割り下を材料が浸るくらいまで入れて、他の具材も加えていきます。
煮立ったら関東風すき焼きの完成です。
お好みで溶き卵をつけて食べてください。
汁気と具が少なくなったら、残った卵を回し入れて卵とじにするのもいいですね。
ご飯に乗せればシメの牛丼の出来上がりです。
関西の“焼く”すき焼きの作り方
次に関西の“焼く”すき焼きの作り方をご紹介します。
関西のすき焼きは割り下を使わず、最初に肉を焼き付けて砂糖や醤油などを直接加えていきます。
関西風のすき焼きは、野菜の量や種類に合わせて味付けをしていくのが特徴的です。
お好みの具材をたっぷり入れて、我が家流の味付けを楽しんでみてください。
まず具材を準備します。
焼き豆腐や白菜は食べやすい大きさに切り、ネギは幅1センチの斜め切りに。
えのきだけは根元を切り落として、春菊は茎の硬い部分を切り落としておきましょう。
味付けのために醤油・みりん・料理酒を混ぜ合わせておきます。
準備した鍋を温めて牛脂を溶かし、牛肉を広げて入れて火が通ってきたら裏返します。
全体の8割ほど焼けたら肉の表面が隠れるほど砂糖を投入します。
すぐに調味料を加えてからめ、取り出していただきましょう。
柔らかいうちに取り出して、肉そのものを味わうのが関西風です。
続けて牛肉を入れて、肉のそばにネギを入れて焼き付けます。
調味料を注ぎ入れて、具を並べ入れます。
その後は水気が出やすい野菜を先に入れながら、他の具材も加えていきます。
少しずつ砂糖を加えながら味を見て、好みの味加減に調節してください。
味が濃くなってしまった場合は、水を入れて薄めます。
取り分けの器に卵を溶きほぐして、具を絡めて食べるのは同じです。
肉の下に砂糖やざらめを敷いたり、上から振りかけたり、みりんは加えないなど作り方はお店や家によって様々あるようです。
まとめ
関東の牛鍋と関西のすき焼きは、元々異なるものでした。
それが関東大震災を乗り越えて、同じ料理名になりました。
ですが関東風も関西風も、どちらも牛肉を使った美味しい料理であることに変わりはありません。
この記事を読んで、それぞれの作り方の違いについては理解してもらえたかと思います。
興味のある方はぜひ料理してみて、関東と関西のすき焼きの違いを舌で味わってみてください。
馴染みのないレシピかと思いますが、実際に食べてみればその美味しさが分かるかと思います。たまの贅沢に、いつもと違うすき焼きを作ってみてはいかがでしょうか?